『唯我独尊』 ~京都ファイアーバーズ・山上直輝投手 vol.4

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―ストレートのMAXはどれくらいですか?

大学のときは137キロでしたが、今はもう少し遅くて130キロ前後と思います。今はもう素直なまっすぐは投げていません。右打者のインコースは、入れる感じでカット気味の回転をつけるイメージで、アウトコースはシュート回転で浮き上がるイメージで投げていますし…。要はベースから離れていくボールを投げている感じです。


―サイドに変えて、実際はどうですか?

ストレートに関しては、横からの投げ方がわかってきました。実際の球速はわかりませんが、感覚的には上からよりもいいボールがいってるはずです。だから、今のところ変えてよかったと思っています。実は、高校のとき、横から投げたらひじが痛くなかったので、監督から「横から投げたら」と言われたのですが、プライドがあって嫌でした。でも、今回は自分で決めたことなので、それほど何も思わなかったですね。


―球種は何がありますか?

スライダーやチェンジアップなどです。スライダー、というよりも今はスラーブに近いですね。だから、縦横のスライダーというよりはボールゾーンに投げる速いスライダーを覚えたいです。今は練習中でもうそろそろ試合で投げたいところですが、自分ではまだしっくりと来ていません。色んな人に聞いて試していますが、投げ方がまだわかっていなくて、変に手先が器用なのかひねってしまいます。チェンジアップは効果的かどうかわかりませんが、タイミングはずれているはずです。遅い球、イコールスライダーと思われないように、ゆるい球でも左右の変化を有効に使っています。打席でバッターが迷ってくれればと思って。


―コントロールはどうですか?

いい方ではないと思いますし、むしろ自信がないくらいです。ストレートでも変化球でも関係ないですね。小中は特に悪かったです。いつも大体4つくらいは出します。(苦笑)大学2年か3年くらいに9イニングで9個も出したのが自己ワーストで、そのときは160球で完投しましたが。無四球は今まで一度もないと思います。


―振りかぶりますか?左足を置くプレートの位置を試合中に色々変えたりしますか?

最初からセットで投げていますが、大学が終わるまでは振りかぶっていました。クラブチームに入って練習する日も時間も少ないので、「振りかぶる」のと「セット」の2つとも練習することが難しくなりました。試合中、セットだけで投げれば1つだけしか練習しなくてもいいという考えもあります。それから、周りのことを考えると、他にも投手がいる中で僕だけどちらも練習しているわけにはいきません。投げる場所はずっと同じところから投げていますので変えません。


―聞くところでは実際、人に気を遣っていてはいい投手になれない、というスカウトの人の考えもあるようなのです。よくわかりませんが、マウンドの整備を後輩にやらせるぐらいでないと大物感がないとか…。あくまで聞いた話ですが。

高校のときにケガしてからはむしろ裏方中心で、みんなが終わってから練習していましたし…。…大学のときは、エースとして結果が伴わなくて、整備くらいはしっかりしないと、と周りの人にせめて態度から見せようと思いました。後輩もそれに気づいてくれたみたいで動きが早かったり、早く終わらせようとしてくれたことがあったのを覚えています。


―いいお話ですね。僕はどちらがプロに近づける性格なのかわかりませんが、後者であってほしい気もしますね。何か練習に対することでこだわりの部分はありますか?よく走る方ですか?

そうですね…。練習以外ではあまり走りませんね。走っても3キロぐらいまでです。ランニングをしても球が速くなるという考えはないので、重要視していません。それなら、スクワットしながら前進するとか、投球に直接関係する動きをします。…それから、シャドーピッチングではタオルを持ちません。


―タオルを持たないのですか?常識的には持つことになっているのですよね?

常識的にはそうかもしれませんが、僕の場合、持つと腕の振りが遅くなるのです。腕の振りを速くするのがシャドーピッチングの目的なのに…。鏡があれば鏡を見て、何も持たずに腕を振ります。


―もう少し詳しく聞かせてください。

シャドーピッチングはフォームを安定させるのと球を速くさせるためにします。腕の振りが速いと球速が上がります。大学1年のときに「投手を教えることに定評がある」と監督から言われて、関東にある私立高の練習にお邪魔したことが2回あります。友達の家に1週間も泊まって。そこで「シャドーはタオルを持たずにやる」と聞いて実践してみたら、成果が出たのですよ。球速までは正確にわかりませんが、投げていて感覚が違いました。ボールが伸びている感じがしました。色んな練習メニューがあった中で、そのシャドーピッチングが一番印象に残っています。でも、富山ベースボールクラブ時代は、雨が降って体育館で僕だけタオルを持ってなかったら怒られましたけど(苦笑)。ピッチングをしてひじを壊した人がいても、シャドーピッチングでひじを壊した人はいませんし。どちらも正解なのかもしれませんが、僕は今でも持たずにやっています。タオルありはいいフォーム、なしは球速アップの説が…。冬場は指先に血が溜まってパンパンになりますが、引いていくのを待ちます。「練習よくやった!」という気にもなります(笑)。


―他に練習のこだわりの部分はありますか?プロテインは飲みますか?

そうですね…。筋トレは特にやらないです。…本当は嫌いなだけです(笑)。腹筋、背筋はやりますね。…ボールを部屋で持つとか触るとか…。プロテインは飲みません。


―また、ひじ痛の話で恐縮ですが、どうして痛くなったと思いますか?

単にオーバーユース(over use)です。体自体が全然できていませんでした。自分には投げ過ぎでひじが耐えられなかったのだと思います。チームでも体が大きくなくて、2番目に小さいくらいでした。高橋も小さくていつも背比べをしていました。高橋は中学でひじを痛めて、高校は野手で入りました。僕は高校1年の秋には、常に痛くて、痛くない日はなかったです。


―ピッチングではどんな練習を意識してしていますか?

右バッターのインコースばかり投げる練習をしています。外は体を切らなくていいので投げるのが楽なのです。


―最近のご自身のピッチングについてはいかがですか?

今のピッチングを大学の時にしていれば、10敗はしていないと思いますね。
間合いやけん制も含めて、投げるコツを覚えた気がします。思い描いたボールを投げられる確率が上がりました。でも、投げ込みを多くしたわけではないのですよ。ひじが痛い分、どうやって投げ込みせずに成長するかをいつも考えていましたし、今も考えています。だから、練習でも球数をそんなには投げていません。


今年で言えば、ピッチングに関して大ケガをしていなくて、点を取られても最少失点でこらえきれています。その辺の試合を作るに関しては自信があります。この試合が良かった、ということもないですけれど、平均的にどんな試合でも崩れていない。1イニングでの大量失点もありません。都市対抗の府予選で戦った三菱の時は、調子があまりよくありませんでした。球が走ってなかったと思います。


―他には?

正捕手がいない状況ですが、キャッチャーが代わったからといって、ピッチングが変わるようではダメだなと。ベース盤の上での勝負ですから。


―自身のピッチングスタイルについては?

のらりくらりといくタイプなので、代え時がわかりにくいと言われます。エースではないけど、2番手で置いておきたいタイプとも。だから、プロで言えばですが、メジャーの上原や川上ではなく、山本昌(中日)や内海(巨人)とか。チームに左投手がいないもので。実は右バッターの方が投げやすいです。


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