『唯我独尊』~東山高軟式野球部・牧紘平主将(捕手) vol.4
―あとは軟式では投手力が命のところがありますね。森本投手はどんな投手ですか?球種は2、3種類ぐらいですか?
森本の球種はスライダー、縦スラ、カーブ、シュート、ツーシーム、フォーク、チェンジアップ、シンカーです(笑)。
―ええっ?!そんなに多いのですか?全部使いますか?
そんなにいらないけど、全部使っていました(笑)。その日によって調子のいい球種を、試合前に話し合って選択していました。でも、森本はまっすぐをどう生かすかだったので、変化球はボールでもいいのです。
―直球のMAXはどれくらいですか?
136キロぐらいです。もうとにかく野球が一番うまいです。軟式のレベルじゃないし、チームどころかずば抜けています。大学でもバッテリーを組みたかったし、あんな楽なピッチャーはいないですね。森本の球を受け続けたかったです。
―牧さんは、同志社大で準硬式をされるそうですね。森本さんは関大で準硬式をされるかもしれないと聞いています。
そうですね。合格しました。本当は軟式が好きなので軟式がやりたいですけども、推薦では準硬式しかなかったので。勉強はあまり好きじゃないから同志社大は不安なところもありますが、野球しかないという気持ちでもあります。森本は硬式に行くことはなさそうなので、準硬式ならもしかしたら大学では試合をやるかもしれませんけども。
―準硬式や軟式をやっていたら、プロにはほぼ結びつきませんが、そのことについてはどうお考えですか?
プロには一切興味がないので。野球が好きですから野球には一生携わっていきたいとは思いますが。好きなことをやることはいいことだと思っています。
―高校の先輩でも、軟式から硬式を握っている人はいるのですか?
はい、活躍は聞きませんが、大学から硬式を握る人はいます。
―森本投手の球はどんな感じなのですか?
受けるのは慣れているので得意ですが、打席に入るのは勘弁してほしいというか、怖いくらいです。みんなよく打てるなあと思いますし、負けるわけないと思います。実際負けることもあるのですが(苦笑)。
―受けることはできても、バッターボックスでは怖い、ですか?
バッターボックスではキャッチャーよりも一歩前だから、その差がすごいあると思います。僕は打てた試しがないです(苦笑)。ヒットを打ったことがないし、無理です(笑)。味方でよかったし、ちょっと敵じゃなくてよかったです。練習では森本の球を受けられる人がいなくて、僕と普段はファーストを守っている五月女くらいです。二人以外は無理でした。よくこの球が捕れるなあと自分では思います(笑)。
―森本投手の球はどうすごいのですか?
「手が痛くないか?」と他のチームの人に言われます。球が浮き上がるというか速いだけじゃなくてのびがあるらしいです。
―軟式は打撃が難しいと思いますが、通算打率はどれくらいかわかりますか?ホームランを打ったことは?
そうですね、…通算2割くらいじゃないでしょうか?4番の森本が出塁するから進塁打を打つことが多かったですけれども。4打数3安打が1回、3打数3安打が2回くらいで、高校通算本塁打は0です。
―へえ~、それは硬式ではないことですね。レギュラーでクリーンアップなら1本くらいはありそうです。
森本が練習試合で1本、他に2年生の内藤が1本くらいで3本打ってる人もいないです。5本打ったことがある選手が全国にいるかもしれませんが、聞かないですね。軟式の面白さはロースコアにあると思います。簡単に打てないし、ヒットにもなりません。でも、硬式ではありえない当たりがヒットになるのが面白いのです。
―へえ~、4番の森本さんでもそうなんですか?
森本は投手としても超一級品ですが、打者としても全国屈指のバッターだと思います。バッティングも相当やばいです。どこに投げても打たれる気がするし、もしかしたら3割打ってるんじゃないですかね。小さいし、しゃべっててもそんな雰囲気はないのですが、あんなやつみたことがないし、金輪際会わないかもしれないです(笑)。
―べた褒めですね(笑)。そんなにすごいと言える仲間がいて素晴らしいです。それでは滅多に二桁安打はないということですか?
3年夏の近畿大会、天理戦では15安打でしたが、地味なヒットや内野安打、ポテンヒットでした。二桁はほとんどありません。でも、ノーヒットノーランをされることもないです。
―さて、近畿大会を優勝し、東山は20年ぶり3回目の夏の全国大会に進出しました。明石公園野球場で1回戦に松商学園(北信越)を3-0で下してベスト8に進出されます。そして準々決勝で神戸弘陵(兵庫)と対戦しました。この試合が延長24回という壮絶な激闘でした。
はい。一日目は延長15回で規定によりサスペンデッドゲーム(一時停止試合)になって、二日目は続き(継続試合)をしました。結果延長24回で1-0でサヨナラ勝ちしました。
―なぜこんなに長い試合になったと思いますか?
神戸弘陵はチームがまとまっていたし、野球のスタイルも似ていました。どちらも作戦がわかるから点が入らずずっと続きました。ピンチとチャンスがずっと繰り返しで、終盤になればなるほどそんな感じでした。いつ終わるのかなあ、と思いましたが、終わってしまえばもっとやりたかったです。
―相手の橋本投手は3連投で、最後は24回一死満塁からこの回4つ目の四球が押し出し四球となったそうですね。この試合では334球目でした。試合時間は2日間合わせてどれくらいでしたか?
5時間くらいですかね。24回やってよかったと思います。どちらも最後は気力の勝負になりましたが、冬に走ったその成果が出たと思いました。守って守ってがチームのスタイルですが、あんな試合でしかも勝てて、チームが完成したと言っていいと思います。
―残念ながら、次の準決勝、初出場の名城大附属戦では2-4で負けてしまいました。相手の小林投手は初戦の初芝富田林戦で史上初の完全試合(88球)を達成しましたね。森本投手は延長24回の2日間で計282球(23奪三振)を投げた次の試合のことでした。2回に3失策して3失点が痛かったですね。
あの試合はもう満身創痍で…。森本がボロボロで、どこまで投げられるかという状態でした。ちょっとでもダメなら全員絶好調でもダメでした。本当はそれではいけないことですが。
―結局、森本投手は4連投で588球を投げて力尽きた。「一球一球がいい思い出でした」という報道でした。大会中の34回連続無失点というのはすごいです。残念な結果でしたが、大会中はどんな生活でしたか?大会日程は硬式と比べると短いですけれども何か印象に残ったことは?
21時消灯で、晩御飯を食べたら1時間フリーですけれども、どこにも行けないですし、試合のことしか印象には残っていませんね。
―準決勝の試合が終わったときはどんな気持ちでしたか?
全国大会に行って目標は達成されたので、泣かないと思っていたのですが、負けるとやっぱり悔しかったです。欲が出て勝ちたい気持ちが強くなったから最後はみんな泣いていました。中でも森本が一番悔しかったはずです。府大会決勝で立命館に3点差をつけられていたときも泣いていましたから。9回表に同点に追いついてからやっと本来のピッチングが冴えてきました。
―延長24回の試合は、軟式では歴代3番目に長い試合だったと報道されています。
延長24回を戦って、最後は本当に敵、味方が関係なかったです。相手ピッチャーの橋本に、ここまで来ると、しゃべる機会があったら「ガンバレ!」と言おうと思っていました。野球の試合だけれど、それだけじゃないなあと思いました。1日目の15回が終わって、次の日試合をやるのが嫌なくらいに緊張しました。でも最終的には純粋に楽しくてずっと続けばいいなあと思っていました。終わってみれば、語っても語りつくせない、そんな感じです。
つづくvol.5へ
―あとは軟式では投手力が命のところがありますね。森本投手はどんな投手ですか?球種は2、3種類ぐらいですか?
森本の球種はスライダー、縦スラ、カーブ、シュート、ツーシーム、フォーク、チェンジアップ、シンカーです(笑)。
―ええっ?!そんなに多いのですか?全部使いますか?
そんなにいらないけど、全部使っていました(笑)。その日によって調子のいい球種を、試合前に話し合って選択していました。でも、森本はまっすぐをどう生かすかだったので、変化球はボールでもいいのです。
―直球のMAXはどれくらいですか?
136キロぐらいです。もうとにかく野球が一番うまいです。軟式のレベルじゃないし、チームどころかずば抜けています。大学でもバッテリーを組みたかったし、あんな楽なピッチャーはいないですね。森本の球を受け続けたかったです。
―牧さんは、同志社大で準硬式をされるそうですね。森本さんは関大で準硬式をされるかもしれないと聞いています。
そうですね。合格しました。本当は軟式が好きなので軟式がやりたいですけども、推薦では準硬式しかなかったので。勉強はあまり好きじゃないから同志社大は不安なところもありますが、野球しかないという気持ちでもあります。森本は硬式に行くことはなさそうなので、準硬式ならもしかしたら大学では試合をやるかもしれませんけども。
―準硬式や軟式をやっていたら、プロにはほぼ結びつきませんが、そのことについてはどうお考えですか?
プロには一切興味がないので。野球が好きですから野球には一生携わっていきたいとは思いますが。好きなことをやることはいいことだと思っています。
―高校の先輩でも、軟式から硬式を握っている人はいるのですか?
はい、活躍は聞きませんが、大学から硬式を握る人はいます。
―森本投手の球はどんな感じなのですか?
受けるのは慣れているので得意ですが、打席に入るのは勘弁してほしいというか、怖いくらいです。みんなよく打てるなあと思いますし、負けるわけないと思います。実際負けることもあるのですが(苦笑)。
―受けることはできても、バッターボックスでは怖い、ですか?
バッターボックスではキャッチャーよりも一歩前だから、その差がすごいあると思います。僕は打てた試しがないです(苦笑)。ヒットを打ったことがないし、無理です(笑)。味方でよかったし、ちょっと敵じゃなくてよかったです。練習では森本の球を受けられる人がいなくて、僕と普段はファーストを守っている五月女くらいです。二人以外は無理でした。よくこの球が捕れるなあと自分では思います(笑)。
―森本投手の球はどうすごいのですか?
「手が痛くないか?」と他のチームの人に言われます。球が浮き上がるというか速いだけじゃなくてのびがあるらしいです。
―軟式は打撃が難しいと思いますが、通算打率はどれくらいかわかりますか?ホームランを打ったことは?
そうですね、…通算2割くらいじゃないでしょうか?4番の森本が出塁するから進塁打を打つことが多かったですけれども。4打数3安打が1回、3打数3安打が2回くらいで、高校通算本塁打は0です。
―へえ~、それは硬式ではないことですね。レギュラーでクリーンアップなら1本くらいはありそうです。
森本が練習試合で1本、他に2年生の内藤が1本くらいで3本打ってる人もいないです。5本打ったことがある選手が全国にいるかもしれませんが、聞かないですね。軟式の面白さはロースコアにあると思います。簡単に打てないし、ヒットにもなりません。でも、硬式ではありえない当たりがヒットになるのが面白いのです。
―へえ~、4番の森本さんでもそうなんですか?
森本は投手としても超一級品ですが、打者としても全国屈指のバッターだと思います。バッティングも相当やばいです。どこに投げても打たれる気がするし、もしかしたら3割打ってるんじゃないですかね。小さいし、しゃべっててもそんな雰囲気はないのですが、あんなやつみたことがないし、金輪際会わないかもしれないです(笑)。
―べた褒めですね(笑)。そんなにすごいと言える仲間がいて素晴らしいです。それでは滅多に二桁安打はないということですか?
3年夏の近畿大会、天理戦では15安打でしたが、地味なヒットや内野安打、ポテンヒットでした。二桁はほとんどありません。でも、ノーヒットノーランをされることもないです。
―さて、近畿大会を優勝し、東山は20年ぶり3回目の夏の全国大会に進出しました。明石公園野球場で1回戦に松商学園(北信越)を3-0で下してベスト8に進出されます。そして準々決勝で神戸弘陵(兵庫)と対戦しました。この試合が延長24回という壮絶な激闘でした。
はい。一日目は延長15回で規定によりサスペンデッドゲーム(一時停止試合)になって、二日目は続き(継続試合)をしました。結果延長24回で1-0でサヨナラ勝ちしました。
―なぜこんなに長い試合になったと思いますか?
神戸弘陵はチームがまとまっていたし、野球のスタイルも似ていました。どちらも作戦がわかるから点が入らずずっと続きました。ピンチとチャンスがずっと繰り返しで、終盤になればなるほどそんな感じでした。いつ終わるのかなあ、と思いましたが、終わってしまえばもっとやりたかったです。
―相手の橋本投手は3連投で、最後は24回一死満塁からこの回4つ目の四球が押し出し四球となったそうですね。この試合では334球目でした。試合時間は2日間合わせてどれくらいでしたか?
5時間くらいですかね。24回やってよかったと思います。どちらも最後は気力の勝負になりましたが、冬に走ったその成果が出たと思いました。守って守ってがチームのスタイルですが、あんな試合でしかも勝てて、チームが完成したと言っていいと思います。
―残念ながら、次の準決勝、初出場の名城大附属戦では2-4で負けてしまいました。相手の小林投手は初戦の初芝富田林戦で史上初の完全試合(88球)を達成しましたね。森本投手は延長24回の2日間で計282球(23奪三振)を投げた次の試合のことでした。2回に3失策して3失点が痛かったですね。
あの試合はもう満身創痍で…。森本がボロボロで、どこまで投げられるかという状態でした。ちょっとでもダメなら全員絶好調でもダメでした。本当はそれではいけないことですが。
―結局、森本投手は4連投で588球を投げて力尽きた。「一球一球がいい思い出でした」という報道でした。大会中の34回連続無失点というのはすごいです。残念な結果でしたが、大会中はどんな生活でしたか?大会日程は硬式と比べると短いですけれども何か印象に残ったことは?
21時消灯で、晩御飯を食べたら1時間フリーですけれども、どこにも行けないですし、試合のことしか印象には残っていませんね。
―準決勝の試合が終わったときはどんな気持ちでしたか?
全国大会に行って目標は達成されたので、泣かないと思っていたのですが、負けるとやっぱり悔しかったです。欲が出て勝ちたい気持ちが強くなったから最後はみんな泣いていました。中でも森本が一番悔しかったはずです。府大会決勝で立命館に3点差をつけられていたときも泣いていましたから。9回表に同点に追いついてからやっと本来のピッチングが冴えてきました。
―延長24回の試合は、軟式では歴代3番目に長い試合だったと報道されています。
延長24回を戦って、最後は本当に敵、味方が関係なかったです。相手ピッチャーの橋本に、ここまで来ると、しゃべる機会があったら「ガンバレ!」と言おうと思っていました。野球の試合だけれど、それだけじゃないなあと思いました。1日目の15回が終わって、次の日試合をやるのが嫌なくらいに緊張しました。でも最終的には純粋に楽しくてずっと続けばいいなあと思っていました。終わってみれば、語っても語りつくせない、そんな感じです。
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