第88回高校サッカーでまさかまさか、初出場の山梨学院大附が青森山田を1-0で下し優勝した。青森山田は13年連続で出場しての悲願が成し遂げられない。戦前では、個人技で上回る青森山田の優位説があったようだ。山梨学院大附は組織力と守備力が評価されていた。

 私が山梨学院大附を推していた理由のひとつに、準決勝の青森山田対関大一戦の結果がある。青森はPKで勝ったとはいえ、終盤に2点を返され、同点に追いつかれる波乱が起きた。これによって決勝を迎えるにあたってイレブンの動揺が起きたと想像している。事実上の決勝戦は、中京大中京戦で10得点を挙げた神村学園と青森山田の準々決勝という声もある。それを4-0の思わぬ大差で勝った油断が準決勝で出たという見方もできそう。準決勝でのPKという勝ち方は、万全のものとは言い難かった。それで、決勝の山梨学院大附戦で選手がやや萎縮したか。先制されて追いかけるという、いつもと違う展開となり慌てたのが敗因、…と勝手に分析してみる。もちろん、サッカーを知らない私のことなので、こじつけのところはある。

 驚いたのだが、山梨は戦前から「前半勝負」というよみが当たり、前半11分に主将・碓井のこれ以上ないミドルシュートでサイドネットを揺らした。そして、そのまま逃げ切り、初出場初優勝。失点されそうな場面もあったが、それまで4試合連続無失点の守備力が効いた。「前半勝負」は横森監督の談話。どうして「前半勝負」なのだろうか。もう少し理由を知りたいところだが、とにかく先制点を取るということなのだろうか。これで野洲が優勝して以来、5年連続して初優勝が続いている。

 事実上の決勝は、1回戦の山梨学院大附と野洲だという声もあった。大会前、5年連続出場を決めた野洲の山本監督は「戦い方は全国優勝を果たした時に近い。結果を出したい」と言っていたようだが、「セクシーサッカー」で5年前に旋風を巻き起こした野洲も、もちろん優勝を狙っていた。しかし、初めて初戦で敗れる。しかも、後半に4失点した。その相手が山梨だった。山梨は、2回戦で立命館宇治を1-0で、3回戦でインターハイ王者の前橋育英を下した香川西を2-0で、そして、準々決勝では、開幕戦で帝京を下したルーテル学院を1-0で下す。準決勝の矢板中央戦は2-0だった。決勝は前述の通り。結局、失点は野洲戦のみだった。

 野洲が優勝して高校サッカー界が変わってきたと言われているらしい。それもそのはず、山本監督はサッカー未経験の指導者。で、初優勝以来、そのサッカースタイルなどが全国の憧れの的になっているらしい。野洲に勝てば優勝というジンクスはないが、野洲に勝ったチームは強いだろうという検討はついた。

 もうひとつ。立命館宇治に勝ったチームに勝ってほしかった。時代は少しずつ変わり、静岡勢や国見、市立船橋、鹿児島実が勝てなくなってきている。それで16強のどこが優勝しても初優勝ということで大会は盛り上がった。そして、優勝したのは、スカウトを強化した山梨学院大附。準優勝は、中高一貫教育の青森山田。我らが京都代表の立命館宇治もそのような運命をたどるかどうか、実際はわからないが、強くなるのは間違いない。また、高校生の年齢の段階で、ユースだ日本代表だって、個人の能力を伸ばす指導も前提となっている。大会中に山梨が挙げた11得点を8人で挙げたことが、このチームの強さであり、決勝ゴールが決まったのも碓井がパスせずに、あの場面で自分でシュートを打ったことがすごいのだと思う。青森はまさかあのまま打ってくるとは思っていない。その一瞬のすきをつかれてしまったように見えた。

 これで野球、ラグビー、サッカーと京都勢は全て全国優勝校に敗退するという、まさに不運である。なんとかこのスパイラルを抜け出さなくては…。組織力や守備力で勝ることがあっても、攻撃力や個人の高い能力が育まれない土壌があるのかどうか。爆発的に活躍できるような個人の育成にも注意を払っていく方針転換が必要であり、そうしなければいけないかのような時代の流れを感じている。でも、よくわからないな。それは高校生の部活を超えている気もするからだ。